5月16日付の河北新報1面「河北春秋」印章についての記事掲載。
2022年5月16日
河北春秋(5/16):戦国武将は重要な文書の偽造を防ぐため、サ…
戦国武将は重要な文書の偽造を防ぐため、サインに当たる花押を用いた。出す文書が増えて負担が重くなると、代用として印章(はんこ)を使った。江戸時代になると庶民の一部にも印章が普及した▼そこで増えたのが、印章を作る職人だ。印判師などと呼ばれ、木材や石を使ってはんこを彫った。明治期に入ると、政府は各種の証書に花押ではなく実印を押すように定め、住民が自治体に印鑑を登録する制度に結び付く▼印判師の系譜を継ぐ手彫りのはんこ屋さんが苦境に陥っている。機械で作る安い三文判や朱肉が不要なネーム印に押され、本来は実印として欠かせない手彫りの印章の影が薄い。はんこ屋さんは後継者が育たず、廃業の増加が懸念される▼「手彫りの技術を後世に引き継ぎたい」。東北印章業組合連合会の庄子喜隆会長(64)らは昨年秋、東北のはんこ屋の跡継ぎら7人を集めて講習会を開いた。受講生は宮城県内で48年ぶりに実施された印章彫刻技能検定の実技試験に挑戦。今春、5人が2級に合格した▼庄子さんは仙台市宮城野区ではんこ屋を営む傍ら河北書道展の篆刻(てんこく)・刻字部門で河北賞を受賞した経験を持つ。「いずれも文字と空間をバランス良く配置する美しさが見どころ」と庄子さん。指先ほどの小さな印材が光を放つ。(2022・5・16)